影絵の木の葉 ゲーム(特にフリーゲーム)/音楽/文学 等のレビューと感想

 "良い作品と出会い、より深く楽しむため"のレビュー・批評、そして思い出を熱くお届け。ゲーム全般・音楽・文学など。

短編

  • 【考察・感想】『鬱夫の恋』いじめをテーマにした凄惨な短編RPG
  • 手軽に!クリアまで約1~2時間の短編おすすめフリーゲーム10選
  • 【フリゲ】『血の穢れを乗り越えて・・・』小説のような独白調の繊細な文章が光るシリアスな短編RPG(第9回ウディコン物語性4位)
  • 【フリゲ】『冒険者35歳』手軽なSLG 老いの悲哀と人生の意味は?(第9回ウディコン総合8位)
  • 【感想・レビュー】『さらばケゴール島』 病とは?正常とは?世の中に対する箴言集(掌編デフォ戦RPG)

【考察・感想】『鬱夫の恋』いじめをテーマにした凄惨な短編RPG

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「自分より下の奴らを、かさで強く叩きました」


『鬱夫の恋』について、考察と感想を書いていきます。後半部分はネタバレ注意。

おすすめ度:★★★★★
プレイ時間:1~2時間

(2017/9/30 加筆修正)

「自分より下の奴らを、かさで強くたたきました」これは作中に出てくる言葉であり、ロックバンド・THE BACK HORNの『ジョーカー』(イキルサイノウというアルバムに収録されており、私も記事(THE BACK HORN『イキルサイノウ』の個人的経験を交えた感想とレビュー)も書いてます)という曲の歌詞の一部でもある。

『鬱夫の恋』をプレイするに当たって意識せずにはいられない、スクールカーストや、「人間、誰かに攻撃されたらより弱いものを攻撃せずにはいられない」ということを象徴的に表しているように感じられた。

 本作のストーリーのあらすじ自体はシンプルだ。クラスのDQNやイケメンにいじめられ、苦しむばかりの日々を送っているウツオが、詩織という女の子と出会って話が動き始める。



このゲームはなぜ、プレイした者の心を動かすのだろうか

それは、『鬱夫の恋』が「ゲーム」であることをうまく生かしているからだと思う。

「小説」ならば、基本的に読者は自分で行動を「選択」することはない。

「ゲーム」ならば、「プレイヤーのが選んだ行動に対してゲームが反応する」という形で進行していく。

「小説」ならば、基本的にそういうことはないはずだ。どんな一本道のゲームでも、やらされてる感のあるゲームでも、そのコードはおそらく変わらない。選択の程度は変わるにしろ。


本作では、プレイヤーの選択の幅が狭い。行動は制限されている。

上記のコードの中で、あえてそうすることによって、いじめという行為の中での「選択のできなさ」「逃げられなさ」「どうしようもなさ」というものが表現されている。


また、「RPGのお約束」というものをうまく利用している。

コマンド式の戦闘という形で、「人の目」との戦いが行われたり、修正液のかけられたお弁当をどうするか、プレイヤーは選択を迫られる。

父親は死別し、女手一つで自分を育ててくれている母親が作ってくれたお弁当を、修正液をかけられたとは言え、捨てたくない。

プレイヤーは色々試してみるが、でもやっぱり食べられない。渋々、「ゴミ箱へ捨てる」を選ぶしかない。

――こういうプレイヤーへの働きかけは、ゲームならではのものだと思う。 


さらに、グラフィック面でも「RPGのお約束」がうまく使われている。

鬱夫の外見はゾンビ、イケメンは西洋風の鎧をきた勇者。スクールカーストや力関係、目立つ点などが抽象的に表されている。戦闘で出てくる敵キャラも、現代アートを連想させるような抽象的で、視覚的に歪んだものだ。


ダウンロード

作品のダウンロード(作者様のサイト、更新されている…! 読むと作者の方のバックグラウンドを知る事が出来る)
(別途RPG_RT.exe、ツクール2000RTPが必要。無い人はググってね)

作者さんの公式サイトの「実体験」と、反転文字の件

作者さんのHPに、現在は消されているが、以前は反転文字で凄まじい情念に満ちた言葉が書き殴られており、話題になっていた。私の曖昧な記憶では、2014年~2015年頃に消されたはず。


そしてその代わりに現在では、鬱夫の恋のもととなった実体験が「遺書代わり」に綴られている。どういう言葉で表現すればいいかわからないくらいの悲痛な体験だ。安易に人に勧められるものでもないと思いますが、せっかく作者さんが公開してくださったものなので、興味がある方は読んでみてほしいと思った。



以下、ネタバレに注意。 ネタバレの部分を飛ばす

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手軽に!クリアまで約1~2時間の短編おすすめフリーゲーム10選

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なかなか長編に手を伸ばせなくなっている方や、さくっと短編を遊びたい方へ。

NAVERまとめ等とは違い、全作品、私が実際にプレイした中からおすすめを選んでいます。過去にこのブログで書いたレビュー記事の短編のまとめでもあります。

他のサイトで見飽きるくらい紹介されているような定番を外したセレクトになっているので、良いゲームとの新たな出会いがあるはずです。


もくじ
  1. RPG(6作品)
  2. パズル(2作品)
  3. シミュレーション(1作品)
  4. ADV(1作品)
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【フリゲ】『血の穢れを乗り越えて・・・』小説のような独白調の繊細な文章が光るシリアスな短編RPG(第9回ウディコン物語性4位)

ヴァンパイアの純血種は封印から目覚め、人間と出会った。

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おすすめ度:★★★

プレイ時間:2~3時間程度

付属の説明書より。
■ゲーム概要■
・シリアスとライトな雰囲気を織り交ぜたRPG
・人間とヴァンパイアを題材にしたストーリー
・主人公の内面描写が多い
・エンディングは一つ

『血の穢れを乗り越えて・・・』の一番の特徴は、独白調の文章が多めで、小説みたいなRPGだというところだと感じた。繊細に内面が描写されているし、ストーリーの構成も練られていると思った。音楽もシーンに合っている。

ただ、気になった点もある。一つは、グラフィック面の弱さだ。
マップチップは文章が織り成す世界観に対して素朴過ぎて、あまり合っていないように感じられた。マップの組み方自体も、荒削りというか、雑さがあるように見えるところが割とあった。とくにフィールドが殺風景だと思った。

もう一つは、戦闘のレベルデザインだ。
序盤はレトロゲームのように、フィールドの雑魚敵に全滅させられることが割とよくある。しかし、味方がすぐ強くなるので、中盤以降はほとんどの敵を瞬殺できてしまい簡単すぎる状態になってしまう。
せっかく、サブクエストとか福引きとか寄り道の要素もあるし、育てたキャラクターとか装備を活かせるくらいに敵の強さを設定してほしかったと思った。

そして、主人公のMPが宿屋や市販のアイテムでは回復しないというシステムも、あまり生かされていないと感じた。MPは「サクリファイス」を使って戦闘中に回復する必要があると言うだけで、MPの管理が重要になるような戦闘自体がなかったと思う。

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(戦闘画面。オーソドックスなシステム)

このように、荒削りさが見える部分があるにせよ、途中でプレイを放棄しようとは全く思わないくらい、ストーリーとテキストが面白かった。
文章量は多めだと説明書にはあったけど、複雑な語彙や難解な表現は出てこないので、身構える必要は無いと思った。これは個人的な好みかもしれないけど、もっと多くても全然問題ないと思った。続きを読む

【フリゲ】『冒険者35歳』手軽なSLG 老いの悲哀と人生の意味は?(第9回ウディコン総合8位)

老いて体力が衰えていく冒険者。何を求め、何を残せるか。そして人生の意味とは。

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おすすめ度:★★★★☆
プレイ時間:1回、20~30分程度(エンディングがいくつかある。不思議と何度もやりたくなる)

ゲームにおいて、冒険者は若く前向きで、希望に満ちて、これから何かを探し求めていく役割が与えられることが多いと思います。しかし、この『冒険者35歳』では事情が全く違います。

主人公は35歳を迎えたものの思うような結果は出ず、無名であり、かといって違う仕事を探すこともできずに惰性で冒険者を続けています。そして「自分の人生はこのままでいいのか?」「何かを残したい。人生に意味を持たせたい」という切実な衝動と苦悩を抱えています。なんて夢がなく現実的なんだ。

夢も希望もなく、それでも何かを成し遂げたいともがき苦しむ。しかしもう若くはなく年老いて能力は日ごとに落ちていく。親の介護もある。そんな悲哀と苦悩に満ちた人生のシミュレーターそれが『冒険者35歳』です。


テキスト量は控えめで、「仕事してお金を稼ぐ」「婚活」「病院」「親の介護」等の選択肢を選ぶだけのシンプルなゲームデザインです。しかし、なんて味があるんだろう。こういうゲームをウディコンにぶち込んでくるセンスがまず好きだわ。

(最近は作れてないけど、自分も昔はフリーゲームを作っていて、プレイヤーをドン引きさせるような内容のやつを表に出して、案の定反応は鈍くてへこんだりしていました。それを考えると、しっかりと評価される作品に仕上げてるのがすごいと思った)続きを読む

【感想・レビュー】『さらばケゴール島』 病とは?正常とは?世の中に対する箴言集(掌編デフォ戦RPG)

「患者」が集まるケゴール島。病とは?正常とは?


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『さらばケゴール島』の紹介ページ(VIPRPG GW2017)
(プレイ時間:30分~1時間 掌編デフォ戦(コマンド式)RPG)

(随時更新)VIPRPG GW祭り2017から選んだ作品の感想・レビューという記事も書いています。


ウィンディが患者の集まるケゴール島を舞台に、魔王把握するというストーリー。

『ドグマの箱庭』『引き裂かれたバダール』『アリスの標本箱』『シューニャの空箱』等を作られた作者さんによるものだと推察され、過去作のキャラクターもほんの少しだけ登場する。しかし、過去作のプレイは前提とはされていない。
過去作も超おすすめです。VIPRPGやフリーゲームの一種の最高峰と言っても過言ではないと思う。思想的にもゲーム的にも面白かった。作家性が強いところがいい。


いつも通り下ネタ注意。そして、前回の紅白の『かなしみの箱舟』でも「病」や「正常と異常」というようなテーマが扱われていましたが、本作でもそれらに関する考察のエッセンスのような言葉(アフォリズム)が満載されています。今回はネット文化や現代人に関することも多いように感じました。



これを連想した。昔読んで難しさはあったけど哲学の中ではやさしい方だと思った。「人は不意に何かを問われた時、その人の職業の規範から答えを返す」という旨の箴言が記憶に残ってるな。

ゲーテ格言集 (新潮文庫)
ゲーテ
新潮社
1952-06-27

ゲーテのほうだとかなりわかりやすい。でも深い。「自分の胸から出た言葉でなければ、人の胸を震わせることは出来ない」ってやつがとくに好きだな。ネット上でも一部が見られる。ゲーテの名言・格言集。支えとなる言葉 | 癒しツアーとか。


話を戻しましょう。
本作の魅力については、もちろん効果音の楽しさや戦闘の要素もありますが、戦闘は簡素なデフォ戦でとくに難しいところも無かったので、本作の最大の魅力はこの箴言集のような言葉たちにあると思います。

なので、いくつか引用してご紹介します。個人的に気に入ったものを6枚のSSでセレクトしました。


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「多数派」の暴力性については繰り返し語られていますね。とても共感しました。

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こういう人、ネットでもよくみかけるよなあ…。すぐ○○障害とか言ったりして。もちろん医学的根拠や病識はなく。

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両極端を参与観察のレベルで理解せずに、自分は良識的な中道派を気取っている人が私は嫌いです。そういう人は本当は自分の頭で何も考えていない。何も理解していないのに全てを知っているふりをしている。


『さらばケゴール島』のダウンロード(VIPRPG GW2017)
(VIPRPG作品はRPG_RT.exeが抜かれているので他のツクール2000作品から持ってくるか、RPGツクールローダーを使うのがおすすめ。また、ツクール2000によって製作されているのでRPGツクール2000 RTPが必要。)


(随時更新)VIPRPG GW祭り2017から選んだ作品の感想・レビューという記事も書いています。

1週間くらい前にツイッターを始めました。VIPRPG GW祭り2017のゲームの感想もツイートしていくつもりなので、良かったらフォローしてね! Twitter:@sdw_konoha

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konoha
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 "良い作品と出会い、より深く楽しむため"のレビュー・批評、そして思い出を発信しているブロガー。好きなゲーム・音楽・文学などと全力で向き合い、熱く本音で語っていく。

 もう今は友達もほとんどいないけど、むしろそのほうが楽しい。昔のあの日々の傷を癒したい。懐かしさや感傷に浸りたいと思っている。ニコ生と某掲示板ばかり見ている病的な人物でもある。

息苦しい国だけど、マイペースに、人どうしの違いを大切に。

嫌いな言葉は「明るく」「協調性」「頑張る」。学校が嫌いだった。

その他、詳しいプロフィール


初めての方へ→多様なジャンルから、当ブログのおすすめ記事を29本厳選した。

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