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老いて体力が衰えていく冒険者。何を求め、何を残せるか。そして人生の意味とは。
おすすめ度:★★★★☆
プレイ時間:1回、20~30分程度(エンディングがいくつかある。不思議と何度もやりたくなる)
ゲームにおいて、冒険者は若く前向きで、希望に満ちて、これから何かを探し求めていく役割が与えられることが多いと思います。しかし、この『冒険者35歳』では事情が全く違います。
主人公は35歳を迎えたものの思うような結果は出ず、無名であり、かといって違う仕事を探すこともできずに惰性で冒険者を続けています。そして「自分の人生はこのままでいいのか?」「何かを残したい。人生に意味を持たせたい」という切実な衝動と苦悩を抱えています。なんて夢がなく現実的なんだ。
夢も希望もなく、それでも何かを成し遂げたいともがき苦しむ。しかしもう若くはなく年老いて能力は日ごとに落ちていく。親の介護もある。そんな悲哀と苦悩に満ちた人生のシミュレーター。それが『冒険者35歳』です。
テキスト量は控えめで、「仕事してお金を稼ぐ」「婚活」「病院」「親の介護」等の選択肢を選ぶだけのシンプルなゲームデザインです。しかし、なんて味があるんだろう。こういうゲームをウディコンにぶち込んでくるセンスがまず好きだわ。
(最近は作れてないけど、自分も昔はフリーゲームを作っていて、プレイヤーをドン引きさせるような内容のやつを表に出して、案の定反応は鈍くてへこんだりしていました。それを考えると、しっかりと評価される作品に仕上げてるのがすごいと思った)
短めのゲームだし、自分で試行錯誤するのが楽しいと思うので、なるべくネタバレに配慮して書いていきます。
35歳の冒険者は日に日に年老いて体力や知力といったパラメータが低下していきます。しかしこの男、冒頭で結婚したいという考えを持つにいたります。
婚活して結婚するにしても、お金がかかります。そのお金は、用心棒やモンスター討伐といった「仕事」で稼ぐことになります。しかし、その仕事も年を取るにつれてうまく出来なくなっていきます。次第に出来る仕事の幅は狭まり、荷物運びくらいしか出来なくなっていきます。
(左:ついに50歳を迎えた冒険者。 右:子育てをおろそかにしたら、ニートになった息子。)
でも、かかるお金はどんどん増えていきます。病院代、子どもが出来たら養育費、その他諸々……。しかも、貧乏暇なしで仕事に忙殺されるあまり、子育てをおろそかにすると子どもがニートになったりもします。
プレイヤーとしては、「おい、こっちは必死に働いてんだよ! こんなにも身を削りながら!」と言いたくなりますが、きっと子どもにも子どもの事情があります。親にほっとかれて教育をおろそかにされたら、鬱憤がたまるのも当然なのでしょう。
こういった内容をテキストで長々と説明するのではなく、プレイヤーの選択に対するゲームのリアクションとして、自然と想像が働くように伝えてくるのがとても面白く、本作の最大の魅力だと感じました。ゲームならではの表現だ。
そして迎えるエンディング。プレイヤーの選択の結果によって分岐します。そこで、主人公は「この人生にはどういう意味があったのか?」と考えます。その答えがまた、悲哀に満ちていることが多くて……。ほんと、どうすればよかったんだろうね。
『冒険者35歳』のウディコン内のページ、『冒険者35歳』のダウンロード(ふりーむ!)
どうも、今回ようやく第9回ウディコンの作品に手を付け始めたkonoha(@sdw_konoha)です。もっと早くにやりたかったけどもうこんな時期か。
他には、『ひとりぼっちの竜の神話』(総合3位)もプレイしました。こちらも面白かったです。また記事を書きたいと思っています。
本作が気になる方へおすすめなフリーゲーム
フリーゲームでは珍しく「老い」を扱っている作品としては、最近だと短編集『かなしみの箱舟』などがあります。同じ作者さんによる過去作だと『ドグマの箱庭』『引き裂かれたバダール』『アリスの標本箱』『シューニャの空箱』等があり、これらも悲哀や苦悩に満ちていて、『冒険者35歳』が気になった方・楽しめた方は気に入るのではないでしょうか。
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死生観については、この本が面白かった。すごく色んな生き方をしている人たちのインタビュー集で、絶望の打破のためのヒントになりえる。視野を広げてくれて生きやすくなった。本屋さんで見かけて買ってみたけど、読んでよかった。
写真家の人とphaさんのインタビューが特に印象に残っている。
おだやかにゆるやかに生きたいね。忙しなくて胃がきりきりするような日々はもうたくさんだ。そしてこういうことを言うと発狂する人が至る所にいることが、さらにうんざりさせてくる。
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