peacesum


雨が降っていたからといって、必ずしも傘を差す必要はないはずだ。

ただ濡れるだけ。不便なだけ。

やりたかったらやってみてもいいはずだ。本当は。


さらには、歌だって唄ってみてもいいかもしれない。
実際、子どもの頃はやっていた人もいるはずだ。どこかの窓の外から、子どもたちの声が聴こえてくることもあるだろう。


しかし、大人になると、路上で唄うことには覚悟がいる。鼻歌を唄うにしても人目を避けねばならない(傘を差さないことに対してあまり共感しない方も、鼻歌については理解できるのではないだろうか)。少なくともそういうことになっている。そう思い込まされている。


参考動画:ミュージカル『雨に唄えば』より。冒頭の6秒だけでも見て頂ければ、このエッセイの理解がよりスムーズになります。




ましてや、日常的に雨の日に傘を差さずに歩きながら唄っていたら、下手をすると通報されそうだ。不審者として背格好や服装の特徴が、情報網で共有されることがないとも言えない。どう誤解されるかわからない。


頭が固く柔軟性を欠いていて、どうしても目の前の人間を犯罪者や異常者ということにしたくてたまらない人たちがいる。現実の姿を無視して、自分とは違う存在・理解できないものをとにかくそんな風に仕立て上げたい人がたくさんいる。飢えた獣の様だ。

あるいは、何らかの意見や感情の表現をひどく嫌う人がいる。何を言われようとも、黙って滅私奉公しないとその人は「幼い」らしい。

もし仮に、その人の言う通りにしたところで、その人は満足しないだろうし、粗探しは止まらない。今度は「積極性や主体性に欠ける」というようなことを臆面もなく言い始める。もはやただの誹謗中傷に過ぎない。言葉の暴力に過ぎない。殴られたら殴り返したくもなる。


いまや、何気ない行為すら暴力的な採点や批評の対象となり、実質的に禁じられている。そういう見えない圧力が存在している。

そのことによるストレスは? あるいは無駄かもしれない行為がもたらすメリットや発見は?

そして、そういう禁止が一日の中で何回あるだろう。朝に起きて、どこかへ出かけて、誰かと話をして、何かをして、アスファルトの道路を歩いて帰って、眠りにつく。

それらの禁止が積み重なって、一か月なら? 一年なら? 十年なら?



いまや、個性が禁止されている。物言わぬアンドロイドへと作り変えられようとしている。

もう作り変えられてしまっている人もいる。そうなると簡単には抜け出せない。


とはいえ、頭で理解したところで簡単に「雨に唄う」ことは出来ない。仮に一日だけやったとしても、継続しなければすぐ元に戻ってしまう。

だとしても、私はその挑戦を価値あるものだとしたい。他の人がやっていたら、応援したい。

時間はかかるのだろう。しかし世界や自分を、ほんの少し、ひとつまみの砂ほどでも変えていけないのなら、この世界にまっとうに生きる価値はない。

波風を立てないように神経質な配慮をしながら、無味無臭で規範的な人間を演じ続けるという生には全く魅力を感じない。お金があろうとも、何を消費しようとも嫌悪感しかない。


他の人との違い。それはしばしば苛烈な攻撃の対象となる。だが、それが唯一の生きる意味だ。私にとって。


雨に唄えば (字幕版)
ジーン・ケリー
2013-11-26



***

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