電話をしている女性
(※イメージ画像です)

思い込みが激しく、話を聞かないおばさん、上司、親...

こういう人達の心理やその原因・特徴について、具体的なエピソードを提示し、それについてなるべく心理学的な根拠を挙げながら、そして難しくならないように配慮しながら書いています。なるべく冷静に、そしてフェアに語っていきたい。

「思い込みが激しい人 心理」で検索すると、あまりにも無意味で表面的な、あるいは誤った内容の、どこかの本やサイトからコピペしただけの記事がいくつも出てきて、ひどくうんざりした。なのでこの記事は真面目に、真剣に考えていきたい人向けです。

建設的に、自分にはどう見えているかという情報提供をして、共感する人がいてもいいし、自分とは違うけどそういう捉え方もあるのかもしれない、と思ってもらってもいい。これは一つの私見です。


たぶんこの記事にたどり着いた方は、不快な思いをしていると思うので、スッキリしたい場合はこちらも超おすすめ。【書評/実践】イライラにおすすめ。水島広子 "「怒り」がスーッと消える本"


エピソード:おばさんが引き起こした、あるコンビニでのいさかい

※プライバシーやわかりやすさ等への配慮のため、実際に見かけた場面から、私がエッセンスを抜き出して様々な部分を改変し、再構成したフィクションです

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 Aさん(40代女性)とBくん(20代男性)はとあるコンビニのアルバイトに同じ時期に応募し、採用された。それから数か月が経った時点での、店長Cから見た二人の人柄は以下のようなものだった。

 Aさんはとても真面目にテキパキと仕事をこなすが、融通が利かず頭が固いところがある。家柄が良く裕福で、厳しい家庭で箱入り娘として育てられたためなのだろうか。仕事場における人間関係の力学をあまりよく知らないのだな、という印象があった。

 一方、Bくんは物静かで何を考えているかわからないところがあるが、こちらもやはり仕事はしっかりしていて、テキパキこなすというよりは一つ一つが丁寧といった様子だった。基本的に温厚な性格だが、ある一定以上のプライベートな領域に踏み込まれることを嫌っているように見えた。

 当初、職場の人間関係は良好に思え、目立った仕事上のトラブルもなかったが、次第にAさんとBくんの対立が表面化してきた。

 そしてついに事件は起こった。

Bくんが職場の自由参加の飲み会(参加費2500円)を欠席したことにAさんが激怒したのだ。

Aさんは人が変わったかのように顔を真っ赤にして、大きな声でまくし立てた。

「Bくん、君は幼すぎる。こういう飲み会には出席するのが仕事のうちでしょ。大体、いつか注意しようと思ってたけど接客の時も声が常に小さくて全く聞こえないし、いつもこういう席から逃げてきたんだよね。経験不足なんだよ。やればできるようになるんだからちゃんとしようよ。」

Bくんは終始困った顔をしていたが、最後に一言だけつぶやいた。
「いや、お金無いんで……」
「言い訳しない!」

 店長Cは、二人とも仕事ぶりに問題はないので、こういうトラブルさえなければ、と思っていた。


解剖:思い込みが激しい人の心理、その原因と特徴

――Aさんはなぜこのような発言に至ったのだろうか?

主に心理学の「認知の歪み」と「投影」いう考え方を用いて、その原因を探り、解説していきます。


 まず、Bくんが抗弁しているように、Aさんは自分自身とBくんの経済状況が違うということを見落としている(あるいは軽視している)。

 そして、Aさんの発言「こういう飲み会には出席するのが仕事のうちでしょ。」と、Bくんの抗弁に対する「言い訳しない!」には「この店のアルバイトは全員、飲み会に出席しなければならない」という主張が含まれている。これは「認知の歪み」の「~すべき思考」と捉えることが出来そうだ。

~すべき思考

他人に対し、その人が直面しているケースに関係なく、彼らは道徳的に「すべきである」「しなければならない」と期待しすること。

これを、アルバート・エリスは"must"に掛けて"musturbation"と命名し、デビッド・D・バーンズは、「should構文(should statements)」と、心理療法家Michael C. Grahamは「世界を現実と違った形に期待している」と呼んだ。

    「人は、他人に尽くさなければならない」
    「私は、全ての人に愛されなければならない」
    「絶対にミスをしてはならない」

wikipedia:認知の歪みより引用)

 次に、Aさんの「大体、いつか注意しようと思ってたけど接客の時も声が常に小さくて全く聞こえないし、いつもこういう席から逃げてきたんだよね。」という発言にも「認知の歪み」が含まれている。

スプリッティング(全か無かの思考)
詳細は「分裂 (心理学)」を参照

スプリッティングともされ、グレーがなく、物事を全てを白か黒かで認識するという、誤った二分法を用いること。オール・オア・ナッシング(all-or-nothing)であり、少しでもミスがあれば完全な失敗だと考える。真実でも、真実らしくもない場合でも、常に("always")、すべて("every")、決して("never")などといった言葉を使うのが特徴。

wikipedia:認知の歪みより引用)

「声が"常に"小さくて"全く"聞こえない」というところは、スプリッティング(全か無かの思考)だと捉えられる。自分にとって気に入らない点やミスがあったようにAさんには感じられたため、Bくんは完全に失敗していると考えている(実際とは違う)。

 そして、後半部分の「"いつも"こういう席から逃げてきたんだよね。」という判断には根拠がない。これは「行き過ぎた一般化」だろう。

行き過ぎた一般化

行き過ぎた一般化(Overgeneralization)とは、経験や根拠が不十分なまま早まった一般化を下すこと。 ひとつの事例や、単一の証拠を元に、非常に幅広く一般化した結論を下すことである。たった一回の問題発生だけで、その問題は何度も繰り返すと結論付けてしまう。

    「彼女は今日挨拶をしてくれなかった、きっと私を嫌っているに違いない」

wikipedia:認知の歪みより引用)

 そして、"Aさんは人が変わったかのように顔を真っ赤にして、大きな声でまくし立てた。"とあり、その内容としてはAさんはBくんに対して「幼い」「経験不足」という類の言葉を繰り返している。

 これは、Bくんの実際の性質ではなく、Aさんの中にある"家柄が良く裕福で、厳しい家庭で箱入り娘として育てられたためなのだろうか。仕事場における人間関係の力学をあまりよく知らないのだな、という印象があった。"という部分のコンプレックスをBくんに「投影」しているのではないだろうか。

 つまり、AさんはBくんの中に自分自身の経験不足を見ている。実際のBくんの状態とは異なった大きさに拡大されたものとして。

心理学における投影(とうえい)とは、自己の悪い面を認めたくないとき、他の人間にその悪い面を押し付けてしまうような心の働きを言う。一般的には悪い面を強調することが多いが、良い投影も存在する。

投影は日常生活においてよく起こっている。例えば、なんとなく嫌いだった人物が、実は自分の否定的な、認めたくない面を体現していたなどである。

wikipedia:投影より引用)

"Aさんは人が変わったかのように顔を真っ赤にして、大きな声でまくし立てた。"という部分(強い感情的反応)もその解釈を補強する。


 そして全体として、Aさんは自分が一度こうだと思い込むとその判断の妥当性や思考プロセスを自分で客観的に検証することが出来ていない。それゆえに認知の歪みを脱することが出来ていない。

 また、Aさんの態度や発言の全体は、「失敗した防衛機制」の「行動化」と捉えられるのではないだろうか。

行動化
行動化(acting out)とは、抑圧された衝動や葛藤が、問題行動として表出すること。具体的には性的逸脱行動、自傷行為、自殺企図、暴言、暴力、過食、拒食、浪費、万引き、薬物依存、アルコール依存などが挙げられる。

wikipedia:防衛機制より引用)

心理学者・河合隼雄の言葉で言うと、「自分を殺して他人を殺す」とも言える。つまり、Aさんは衝動や葛藤を抑圧していて、強い不満があり、それ故に他人に対して暴言を吐かずにはいられないのだろう。


 以上です。この記事が、誰かの精神の健康の一助になれればいいと思っています。だれしもある程度の歪みや未熟さを持っていると思います。

 人がそれぞれの適性の中で学んだ知識や経験が、他人を傷つけるためにしか使われないというのは、悲しすぎます。

確かに、AさんはBくんの中に認めたくない自分を投影している。しかし、投影とは悪いことだけではなく、最初はそれを攻撃したくなったとしても、次第にその中にある良い部分にも気が付いていきます(時間はかかるかもしれませんが)。これを「投影の引き戻し」といいます。

(後記:真面目すぎたかな……。人間、きれいごとだけじゃ生きられないよなぁ。目をそむけたくなるような負の側面を見て見ぬふりしてはいけない)


こころの処方箋 (新潮文庫)
河合 隼雄
新潮社
1998-05-28

 本屋に行けば「メンタルケア」「ストレス解消」「人付き合い」、この手の本は数あれど、寝て起きたら忘れてしまいそうな薄い内容のものも結構多い。しかし、この本は非常に易しく楽に読めて、かつ一時的でなく心に浸透するような、もつれた心を一つ一つ解きほぐす言葉が書かれていた。


 ネット上の断片的な知識だけではなく、しっかりとユング心理学を自分のものにしたい方にはこちらがおすすめ。わかりやすく、かつ深い内容を扱っているユング心理学入門の良書。読んでいてとても楽しい。私も昔この本から学び始め、折に触れて何度も読んできました。人間の心理の理解だけでなく、小説やゲーム等の物語の理解にも援用できるだろう。


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この記事を書いた人

konoha  konohaTwitter [ブログの更新通知も]note [毒々しい創作関連]

 「満たされない人生に、ゲームでささやかな楽しみと癒しを」をテーマに発信しているブロガー。他には好きな本・音楽とも全力で向き合う。ニコ生と某掲示板ばかり見ている病的な人物。息苦しい国だけどマイペースに、人どうしの違いを大切に。 嫌いな言葉は「明るく」「協調性」「頑張る」。学校が嫌いだった。 その他、詳しいプロフィール