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おすすめ度:★★★★☆
プレイ時間:1時間程度


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 『戦海ディザイア』は、シリアス目な短編ノンフィールドRPG。プレイ時間が短めで気軽にできる作品を求めている方には特におすすめ。シンプルだけどちゃんとコクのあるゲームシステムで、上質な1時間を過ごすことが出来ると思います。ユーザー投票企画、フリゲ2016でも上位にランクイン。


 まず、個性的な絵が目を引く。彼女たちは亡国「レイドリア」の残党を狩る部隊「逆十字」のメンバーだ(逆十字は力が全てという信条を持つ)。残党たちは「カース」と呼ばれる異形の怪物を使役し、「カース」を召喚する能力者を「アギト」といった。そして、各所にいる残党を殲滅せよ!というところからストーリーが始まる。

 ゲームは、探索・戦闘・会話イベントが主体となって構成されている。探索は、上記(左)のSSを見てもらえれば分かるように、それぞれの矢印に前進・戦闘・会話・メニューという役割が割り振られている。戦闘画面は上記(右)のようになっている。ボス戦では「アギト」を倒すと「カース」も消えるので、倒す順番を考える必要がある。

 戦闘バランスは良好で、単純過ぎず、パズル的過ぎず、という印象を受けた。RPGによくあるMPを消費する技だけでなく、戦闘中にたまるTPというポイントを消費する技が強力で、鍵を握っていると感じた。

 例えば、「1ターンの間敵単体を行動不能にして、4ターンの間猛毒状態にする」というものがあって、他の技「猛毒状態の敵に対して2倍のダメージを与える」とシナジーがあったり、「自分へのダメージを無効にする」という技があるのに対し、「敵からのすべてのダメージを対象の味方単体に引き受けさせる」という技があったりと、色々と戦略を考えさせられるのが楽しい。TPは割とタイトな運用を求められるので、シナジーを意識するだけでなく敵の攻撃を含めた状況判断が必要となる。攻めに回し過ぎると全滅したり、防御に回し過ぎるとじり貧になったりと。

 また、ある程度ゲームが進行すると、買い物が出来るようになり、そこで買える技がなかなか強力なので、どれを誰に使わせるかというところも悩ましく、楽しい。

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 スタッフロールが流れたとき、良くも悪くももっとやりたいと率直に思った。ストーリーも戦闘ももう少しボリュームがあってもよかったのかもしれないとも感じたが(舞台とか設定のスケールが結構大きいし)、そう思わせるのもきっと本作の魅力故なのだろう。全体として、フリーゲーム的な、きれいにまとまりすぎない手触りもいいね。

 ところで、Vectorの『戦海ディザイア』レビューでは、評価しつつも「クセが強い」「万人受けとは言い難い」のような表現が目立っていますが、私はまた違う感想を持ちました。確かにストーリーやキャラクターをコンシューマー的な王道RPGと比較すればそういう意見になるのかな、という理解はできますが、私はむしろシンプルで手軽なゲームシステムやプレイアビリティの高さに注目して、色んな人にプレイしてほしいなと思いました。Vectorのレビューを見たのをきっかけにプレイした人間が言うのもあれかもしれませんが。というか、最近よくある逆接的な宣伝文句なのかもね。

『戦海ディザイア』のダウンロード(ふりーむ!、RPGツクールVX Ace製なのでRTPが必要)

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今日のひとこと

 絵が個性的なのって強いなと思いました。山ほどあるゲームの中で、画像を見た瞬間に自分のオリジナリティを印象付けられますもんね。

追記)ここからは話が変わって、ジャンプ漫画についての余談なのですが、なんか『ボーボボ』と『デスノート』をふと思い出しました。(『ボーボボ』をご存知でない方は、『世紀末リーダー伝たけし!』と読み替えてもらっても結構です)
 両方とも好きな作品で(ジャンプ連載でボーボボ読んでた時、ドンパッチは緑のイメージでした)、小畑健の緻密で均整の取れた絵はもちろん素晴らしいと思うのだけれど、ボーボボは澤井啓夫の絵だから成立すると思うんですよね。適材適所というか、個性というか、そういうものもとても大事だと思います。近頃は広告戦略のせいか、きれいではあるんだけどテンプレ的というか(つまり小畑健的なものの不完全な模倣)、「命が吹き込まれていない彫像」みたいな、無味無臭のものが絵だけに限らずいろんな分野で増えてきていると感じています。そういうものって批判されにくくはあるけど、印象にも残らない。時が経てば誰一人として思い返すことはない、と思います。つまり、目立った欠点がないことと魅力的であることは違う。欠点が魅力を増すこともある。
 もちろん、今も昔も、少しアンテナを広げればそういうものとは違う優れたものがたくさんあると思いますが。自分が見えてないだけなのに、簡単に「昔は良かった」みたいなことを言うようにはなりたくないですね。

ボボボーボ・ボーボボ 3 (ジャンプコミックスDIGITAL)  DEATH NOTE デスノート(1) (ジャンプ・コミックス)


  
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この記事を書いた人

konoha  konoha/コノラスTwitter [つぶやきと更新通知]note [喜怒哀楽に全力な日記]

 「良い作品と出会い、より深く楽しむためのレビュー・批評、そして思い出」を発信しているブロガー。好きなゲーム・音楽・文学などを全力で語る。嫌いな言葉は「明るく」「協調性」「頑張る」。学校が嫌いだった。近頃はnoteで、過去の重い話や好きなことで生きていくための歩みを書いている。

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