「死ぬくらいなら辞める」ができない理由 過労自殺を描いた生々しいマンガに共感の声集まる(ねとらぼ)

上記のリンク先の記事でこの漫画の全ページが読めます。

 電通の女性新入社員(当時24)が過労自殺し労災認定された問題を受け、汐街コナさん(イラストレーター)が自らの体験をもとにした漫画を描きました。その漫画は10月25日にツイッターに投稿され、現在リツイートは13万以上、お気に入りは11万以上という驚異的な数字となっています。テレビのニュースでも取り上げられたようです。私も読んでみて拡散すべき内容だと感じたので、本ブログでも微力ながら記事として取り上げたいと思います。

「後世に残るこの世界最大の悲劇は、悪しき人の暴言や暴力ではなく、善意の人の沈黙と無関心だ」(キング牧師・アフリカ系アメリカ人(黒人)公民権運動の指導者)

以下、8ページと短いので読了を前提として記事を続けます。

感想

 私の感想としては、書いてある内容に基本的に共感しているので漫画の表現についての内容が中心となりますが(専門家でもないのにそういうことを偉そうに語るブログでもある)、8ページという短い中に作者さんの伝えたいことが凝縮されている優れた漫画だと感じました。
 まず、すでに1ページ目が胸に訴えかけてくる興味を引く描き出し。「今一歩踏み出せば明日は会社に行かなくてもいい」という合理的で不合理な思考が、大きなコマでクローズアップされこの漫画の方向性を読者に伝えている。
 そして、4ページ目からの後半部分では、人生の可能性や選択肢を比喩を用いてビジュアル的なイメージに転換し、5ページ目でそれを「塗りつぶす」という印象的な表現で一つ一つ排除していき、6ページ目の大ゴマで読者に強いインパクトを与えることに成功していると感じた。面白いし、優れたメッセージ性を持った漫画。ぜひ多くの人に読んでほしい。

 作者さんのメッセージも掲載されていて(過労自殺「死ぬくらいなら辞めれば」ができない理由 漫画作者に聞くの下部より引用)、「反響の量にも驚きましたが、『同じ状況を経験した・経験している』という反応が、思ったよりずっと多かったです。正直、『こんなことになる人がいるの?』というような感想が多いと思っていました。みんな、頑張り過ぎています」とある。「みんな、頑張りすぎています」というところに「まさにその通り!」と思った。今の日本の労働環境は別の記事でも少し触れたが、他国からみると異常な暗澹たる状況であると言わざるを得ない。

参考:視点・論点 「過労死は告発する」 | 視点・論点 | NHK 解説委員室 | 解説アーカイブス 厚生労働省の情報等を中心に論じられており、過労死が個人の資質に全てを還元できるようなものではなく、構造的な社会問題であるとはっきりわかる。

それでもしつこい「老害」のコメント

 とても残念に思ったのは、この漫画についてのニュース記事をネットで調べている中で、過労自殺された方や苦しんでいる方を中傷するようなコメントを複数見かけたことだ(そのため本記事では意図的にコメント機能が無いニュースサイトを選んでリンクしている)。

 上から目線でそういうコメントをする人たちは、あまりこういう言い方はしたくないが「老害」であると言わざるを得ない。「老害」という言葉を使いたくない理由は、「幼い」「未熟」「ゆとり」「中二病」等と同様に主観的なレッテル貼りに多用される言葉であり、そういう言葉を使うと建設的な議論にはなりにくいと思っているからだ。
 彼らのコメントのパターンはそう多くない。「幼い」「未熟」「ゆとり」のような言葉を多用し、主観的な決めつけをもって過労自殺された方や苦しんでいる方を中傷しているに過ぎない。そして彼らはそういう形でしか語れない。なぜなら、客観的なデータを用いて具体的に論じればその考えが間違っていることは明白であるからだ。
 さらに余計なことに、彼らのコメントの多くには客観的データや具体的な論拠の代わりに、彼らの個人的な経験が付記されている(たいていの場合、「昔はもっと厳しい状況だったが、自分はうまくやった」という自慢の形をとる)。それは自分自身を肯定し、苦しんでいる人を否定したいだけのものであり何の役にも立たない情報だ。そもそも、実際の経験とは乖離した歪められた記憶ではないかという疑いを持たざるを得ない。個人的な経験も主観的な情報であり、また個別の状況であるので直ちに普遍的な状況に適用できるものではない(時代は進んでいくのである)。これもまともな論拠としては到底採用できないものである。

 本当に人生経験を積んだ慧眼で理知的な大人であるのならば、客観性や論理性を著しく欠いた「幼い」コメントで苦しむ人を中傷するのではなく、もっとまともに論じるべきではないかと思った。ニュースサイトのコメント欄のような共用の場であるのならなおさらのこと。
 "気を付けていないと、新聞(メディア)はあなたが「苦しんでいる人たちを嫌うように」仕向け、「苦しめている人たちを愛するように」誘導するでしょう(Malcolm X、黒人公民権運動活動家)"という言葉もあるが、彼らのようにならないためにも、メディアを無批判に受け入れて、真に批判すべき対象と真に擁護すべき対象を見誤ることをしないように注意しなければならないと思っている。

漫画、音楽、小説、ゲームなどの表現作品の持つ力

 この漫画のように、優れた表現作品には人を救う力があると思っているので、私はこういうブログを書いている。表現のその力は黒人音楽のブルースの成立等を考えれば容易に理解できる。
 もっとも、今回紹介した漫画でも言われているように、重篤な症状に対しては心療内科を受診し、薬を飲むこと等も重要であると思う(うつ病のメカニズムは現代医学では未解明の部分が多い。また、気持ちの問題というような根拠のない俗説もあるが、そんなことでどうにかなるようなものではない。そんな医学的根拠はない)。

 精神的な危機的状況に対して最も即効性のあるメディアは音楽だと個人的に感じている。短い時間にその力が凝縮されているうえ、他のことをしながらでも聴く事が出来るからだ。具体的なおすすめ作品もいくつか挙げようかとも思ったが、万人に効果があるような曲を提示するのは難しい。まだ元気の残っているうちに、音楽に限らず自分に合った作品を探してみてほしいと思う(私の個人的なおすすめはTHE BLUE HEARTS。クラシックではモーツァルトとかもいいかも。その他にはこちら:カテゴリ:音楽)。
 とくに精神的に困難な状況になってくると、小説を読むということが難しくなってくることもあるようだ。しかし、優れた歴史的な文学を読んでその世界観や人生観・価値観を自分の中に呑み込むということや、自分と同じような悩みを持つ人々が「どう考え、行動したか」について知ること(多くの悩みは自分ひとりだけの悩みではなく、すでに同じように悩み苦しんだ人がいる)は、周囲の雑音やハラスメントに対してもぶれない自分の心の軸を作っていくという上で大きいと私は感じている。私の個人的なおすすめ作家は、村上春樹とドストエフスキー。さらにはこちら(カテゴリ:小説)。
 本ブログの中心に据えているフリーゲームについては、自分で能動的なプレイを求められるものであるのと、音楽や小説等と比較して圧倒的に歴史が短いので、精神的・時間的余裕がない方には少し厳しいかもしれない。少し元気が出てきた頃におすすめしたい。しかし軽視するつもりはなく、近年重要な表現形態の一つであると私は考えている。個人的なおすすめは、『ワールドピース&ピース』痛みと再生の物語。大長編の大名作RPG等。

THE BLUE HEARTS
THE BLUE HEARTS
トライエム
1987-05-21

  
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 近頃は、ゲーム全般(フリーゲーム、ハースストーン、Steam等)とニコ生、鬱な邦楽ロック、純文学(主に村上春樹)等について書いていることが多いブログです。

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konoha  konohaTwitternote[創作関連]

 この世は生き地獄。争いが果てぬ阿修羅の世界。創作の光だけが救いだ。ネットの暗部ばかり見ている病的な人間です。不条理で悪がはびこる世界と社会に対して強い憎しみを抱いています。 学校が嫌いだった。「明るく」「協調」「頑張る」吐き気がする。 息苦しい国だ。 その他、詳しいプロフィール