おすすめ度:殿堂入り
(以下のレビューは、本ブログ開設初期に書かれたものであり、拙さが目立つので再プレイして書き直したいと思っています。暫定版としてとらえていただきたいです。もちろん、作品に対する強い思い入れは全く変わっていません)
フリーゲームには、商業としてはなかなかやっていけない、エンターテイメントであることだけに留まらない真摯な表現としてのゲームがある。本作も、その一つに数えられると思います。
(以下のレビューは、本ブログ開設初期に書かれたものであり、拙さが目立つので再プレイして書き直したいと思っています。暫定版としてとらえていただきたいです。もちろん、作品に対する強い思い入れは全く変わっていません)
フリーゲームには、商業としてはなかなかやっていけない、エンターテイメントであることだけに留まらない真摯な表現としてのゲームがある。本作も、その一つに数えられると思います。
私はこのゲーム『Another Moon Whistle』が好きで、今回プレイするのは二回目です。もちろん前作『Moon Whitsle』(通称・ムンホイ)もクリア済みです(ムンホイの記憶は薄れているため、十分な前作との比較は出来ませんが)。
一回目のプレイは、けっこう前なので今は内容をかなり忘れている状態です。当時のプレイも、面白かったという記憶はあるが、当時は若すぎた自分には含蓄のある内容を十分に理解しきれていなかったという印象もある。なので、今回時を経て、再び手に取ったわけです。
現在、第5章の終わりまでプレイした。ここまでの感想は、やっぱり面白い。
「推論空間」というシステムが物議を醸しているようだが、少なくとも私にとってはこれも面白い。どれも考えさせられるテーマで、ただエンターテイメントを享受するだけでなく、人間として成長できそうな気がする。反省させられることも多いし、疑問を持つこと自体に共感することも多い。議論の内容については、実際にプレイしてみて確認してほしい。どれもよく考えられ、洗練されていると私は思う。議論と言っても、理屈だけでもなく、感情や感覚だけでもない洗練されたものだ。
しかし、真に迫った表現であるのと同時に、暖かみも感じた。主人公の父ハヤテの「人には誰でも生まれてきた理由がある」という言葉に代表されるように。
もちろん、エンターテイメントとしてもこのゲームは面白い。議論好きの好事家だけのものではない様に思う。戦闘も、考えてプレイしないとクリアできない、程よい難易度だと感じた。
また、「幼稚園児や小中学生がこんな難しい議論をするのはリアリティがない」というような批判も一部ではあるようです。
確かにその意味でリアリティはないだろう。しかし、このゲームにそのリアリティは必要なのだろうか。
私は必要ないと感じます。アナザームーンホイッスルの世界では、そういう議論が生ずるに相応しい不思議な「場」が十分に用意されているように思います。「ゲーム内でのリアリティ」とでも呼べばいいのだろうか。そういう意味でのリアリティがある状況で、「現実世界におけるリアリティ」を過剰に考えることこそが野暮ではないだろうか。少なくともそう私は感じました。違和感は生じず、ゲームの世界に引き込まれました。「推論空間」や小中学生等には難しいと思われる議論の展開も、私には自然と受け入れられました。アナザームーンホイッスルの世界という「場」に、キャラクターを配置したら、自然と生まれる会話のように。
最後に
最後になったが、このゲームには作者の「魂」「生きた人間の吐息」のようなものを感じずにはいられない。私はそこに、ひきつけられる。
この作品は強いメッセージ性を持っている。
自らを「正義」とでも言わんばかりの態度を取る多数派の欺瞞、疑わしさが繰り返し問われる。
また、作品への批判だけではなく、作品を通じた作者への批判(というよりもはや個人攻撃と受け取られかねないものさえある)もネット上にある。この作品は確かに尖った作品ではあるが、作者や本作のシナリオを、「幼い」「呆れた」「痛い」とするのは早計ではないだろうか。もう少しよく考えて、冷静に本作を受け止めて欲しいと私は思う。確かに、この作品は人を選ぶということはあるし、前作『ムンホイ』からのギャップはあるにしろ。
そして、同時に私も、「安心して楽しめるエンタメ作品」を求めている人たちの立場を理解しようと努める必要があると思います。
この作品に出会えてよかった。私は本作と共鳴したし、それはある種の救いでもあった。
このゲームのダウンロード(ベクター)
余談ですが、このゲームが好きな人は音楽のTHE BACK HORN(初期、ヘッドフォンチルドレンまで)が好きかもしれません。
聴いたこと無い人はぜひ聞いてみてください。
最初に聴く場合のおすすめは3rd Album「イキルサイノウ」です。
「俺達は害虫 燃え尽きて死んじまえ さあ!」(「惑星メランコリー」)、「意味も無く答えもない孤独な戦場」(「孤独な戦場」)、「笑う才能が無いから、顔が醜く歪むだけ」(「ジョーカー」)のように重く真摯に突き刺さる魂の叫び。
アマゾンで視聴もできるのでぜひ聴いてみてください。